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農家さんは料理人ではない

私は田舎に住んでいます。みんなが想像するような田畑の風景が広がる田舎です。田畑が多いので、もちろん農家さんも多いです。しかし、私はこの農家さんたちを見ながらずっと思っていることがありました。
それは、農家は生産者であって料理人ではない。ということです。

私はずっと料理人をしてきました。今は田舎に帰り、小さな飲食店をしていますが昔は大阪の方で料理人をしていました。
ドラマやアニメなどで戦場のような調理場が出てきますがまさにあのような場所でした。
私は毎日多くの食材と向き合い、仕込み、料理してきました。

よくテレビに農家さんが出てきます。タレントさんが農作業を手伝い、その後に農家さんが「こうして食べるのが一番美味しい。」とタレントさんたちに料理して振る舞う。
そのシーンを観ながら私はいつも思っていました。私ならこうした方が美味しいと思う…。
まぁ、テレビの感想なので人それぞれです。
私が個人的に農家さんは野菜作りのプロであり、私たち料理人はその食材を料理するプロであると思っているだけです。料理に対して誇りを持っているだけです。

しかし、農家さんでも元料理人の方がいたり、野菜ソムリエの資格を持ったりと、それぞれの飲食店に合わせた品種を作るカスタムオーダーの野菜を作るなど、料理の面からも真剣に取り組んでいる農家さんが
たくさんいることも、もちろん知っています。テレビでも最近ではわざわざ料理人を、呼んで来るパターンも見かけるようになりました。

残念ながら私の田舎ではまだそのような流れが見えません。田舎の農家さんには年配の方が多く、新鮮な野菜さえ使えば何でも美味しいと思っています。
それは間違いではありませんし、事実なので否定もしません。
しかし、その野菜さえ使えば何でも美味しくなるので料理の腕は必要ない。と言わんばかりの発言をされたこともありました。
私の周囲にある他の飲食店さんたちも、農家さんたちに同じ印象を持っていたようでした。

そんなある日、地元の公園で大きめのイベントが行われることになりました。その祭りで地元の飲食店と農家さんからも出店をすることになりました。出店者たちの打ち合わせのときに農家さんが、「出店用の野菜なら安い値段で用意する。」と言ってきました。
しかし、飲食店サイドの私たちは顔を見合わせて「そちらも準備が大変でしょうからこっちは適当にします。」と返しました。
農家さんに反発したわけではありません。私たちは自分たちが出す品に合った野菜を使いたいだけでした。

祭りの当日はもちろん、飲食店サイドの店ばかりにお客さんは集中しました。飲食店サイドの出店はスタンド型の看板や商品を印刷したポスター、
お客さんから見える調理器具の置き方や調理行程など視覚的な部分にも
気を使っていました。しかし、農家さんたちはベニヤ板に「くしコンニャク」、「たこ焼き」、「かき氷」と殴り書きしてあるだけでした。
しかも、作業スペースは散らかり放題。「道の駅でいつもこうしてるからこれで良い。」と言っていました。これではお客さんは安心して買うことはできません。

私は農家さんの悪口を言っているわけではありません。その道にはその道のプロがいます。これは何も農家さんに限ったことではありません。私も知らずのうちに勘違いを起こしていると思います。問題なのはその間違いに気がついたときの行動の仕方です。

その日から農家さんたちは私たち飲食店の話しを、ちゃんと聞いてくれるようになりました。
今では「このキャベツならどんな料理にすると美味しい?」と聞いてくれるほどになりました。私はお互いの仕事が理解し合えるようになったことを嬉しく思っています。